【坂本しのぶさん インタビュー 「仲間がいるって、なんかいい」】

「作った料理を美味しいって食べてもらえるのが、やっぱり一番嬉しいんですよね」そう笑顔で話されるのは、坂本しのぶ(さかもと しのぶ)さん。

現在、お料理教室やお料理をお届けするサービスなど、
お料理で人を笑顔にするお仕事をされています。

久しぶりに実施したお味噌作りレッスン

お届けサービスの日は、一度に10品ものお料理を作られるんだとか。

「作るのは好き。だけど作って満足しちゃうから、自分で食べるのは、実はそんなに好きじゃないのよ」と茶目っ気たっぷりに笑います。

もともと、お料理を作るのが好きだったと話すしのぶさんでも、9年前にご主人を亡くされてから、自分のためだけに料理を作ることができなくなり、コンビニの惣菜で済ませていた時期もあったそう。

そこから「人が食べてくれるって、やっぱり嬉しいな」と思えることがあり、今にいたると言います。

翌日、はじめてのお味噌教室を控えたしのぶさんに、
今までのお話やこれからの夢を聞かせていただきました。

目次

何を作ろうか考えている時間が一番好き


ー 今、お料理のお届けサービスをされていると聞きましたが、昔からお料理は好きだったんですか?

しのぶさん「そうですね。小学生の頃から料理をしてました。中学生の時にはもう、自分のお弁当作ってたし」

ー 随分早いですね!それは自ら率先してはじめたんですか?

「しなきゃいけない環境もあったかな。小学校3〜4年生の頃から年に2回ぐらい、母が田舎に田植えとか行ってたの。家には父と私と妹で残されて、私がやるしかないかって。でももともと、好きは好きなのかなあ」

ー料理をしていて、どういうところが一番好きですか?

「食材を見て、何を作ろうかなって考えるのが一番好きかな。たとえばキャベツが丸ごと一個あったら、このキャベツで何品できるかなって考えるのが好き」

食べてくれる家族を失い、コンビニ通いの日々

ーお料理が好きなら、毎日ご家族にお料理を作るのも楽しいですね。

「私、もともと主人と二人暮らしだったんですけど、9年前に夫が亡くなって。それから一人なので」

ーそうだったんですね…。

「主人がいる間はもちろん毎日料理を作っていたんだけど、食べてくれる人がいなくなっちゃったら、なんか、自分だけのご飯を作れなくなっちゃったの。それまではコンビニなんて全く行かなかったのに、その頃は毎日行ってた」

ー作る気がなくなってしまったんですね。

「もちろん、たまには作ったりしてたけど、自分が食べるものだからなんでもいいやって思って、コンビニとかスーパーの惣菜ばっかり。1~2年は続いたかな」

ーそこからもう一度「料理を作ろう」と思ったきっかけは、何だったんですか?

「通ってた美容院の子が近所に住んでたんだけど、みんな独身で、地方から出てきてる子が多くて。その子たちが私のことを心配して『仕事終わったら行くね』って言ってくれて。

じゃあ『何か食べる?』って聞いたら、もちろん食べるって言うから、ありあわせで作って出してたの。
その子たちが美味しいって食べてくれて。それでやっと料理をする気になって。」

ーやっぱり食べてもらえるのって、嬉しいですよね。

「そうそう。美味しいって言ってくれて、嬉しかったです」

ーご自身でも食べるのが好きなんですか?

「食べるのは好きだけど、自分の料理はあんまり食べたくないんだよね(笑)」

ーえ!どういうことですか?!(笑)

「作ったところで達成感を感じて、満足しちゃう(笑) やっぱり、食べてもらう方が嬉しいのかな」

好きだった料理を仕事に

味噌作りレッスン

ーお料理のお仕事をされる前は、何をされていたんですか?

「夫が会社を経営してたので、それを手伝ったり、あとは自宅でエステをやったりしてて。

でも、突然主人がいなくなって、何を仕事にしたらいいかが分からなくなったの。
エステはやってたけど、これを一生やるのはきついなって思って。けど生活をしていかなきゃいけないから、収入もなきゃ困るし。

私、どこかにお勤めをしたことがなくて。今更電車に乗って通勤とかできるのかって葛藤もあって」

ーでもお仕事はしなきゃいけないと。

「その頃、歯科医の友達から手伝って欲しいって言われて、最初は夕方だけ通い始めて。でも女性だけの職場だったから、人間関係が結構大変だったんだよね。それで辞めてしまったんだけど。でも4~5年は働いたかな」

ーそれは大変でしたね…。その後はどうしてたんですか?

「NPO法人で食事を作るっていう仕事をはじめて。精神疾患がある人の自立支援の作業所なんだけど、そこの昼食を。毎回10人分ぐらいかな。

料理をそんなに大量に作ったことがないから、やってみたいなって思って。今も行ってるんだけど、男性が多いからボリュームのあるものを作ってます」

ーそこからお料理の仕事に就かれたんですね。

「あ!その前に、料理教室の先生と知り合って、そのアシスタントをしてた!」

ーそうなんですね!アシスタントって、どんなお仕事をされるんですか?

「テレビにも出てる先生だったので、料理番組のお料理の差し替えとか。

先生が『キャベツの千切りをします』って途中まで切ったあと『千切りしたキャベツがこちらです』って登場するじゃない?その千切りをしたりしてました。あとは、焼き物を進行に合わせて焼き出したりとか」

ー次の工程の素材が出てくるの、料理番組でよく見ます!アシスタントの方が、裏で準備されてるんですね。他にはどんなお仕事を?

「その先生のお手伝いが終わる頃に、もう一人、違う先生のアシスタントもしてたの。料理教室のお手伝いとか、ご自宅のキッチンで雑誌の撮影があったりしたから、それのお手伝いとかもしてた」

ー楽しそう!

「でもそれは楽しいっていうか、結構大変だったかな」

ーそのアシスタント経験から、ご自身でも料理教室をやってみようと思われたんですか?

「もともと料理は好きだったし、アシスタントをすることで、ちょっと力もついたかなって。人に教える経験とかね。それまではお料理教室も行ったことがなかったから」

ーそうなんですね。通うより先にアシスタントで入ったんですね。

「そう。最初に料理教室へ行ったのは、今住んでいる横浜に引っ越してきてからかな。近所にお料理教室があったから、そこにお昼ご飯を食べに行ってたの。それまで料理教室って行ったことがなかったから新鮮で。『ちゃんと盛り付けするんだー』って(笑)」

ー料理教室のアシスタントに、近所の料理教室…。突然、生活に料理教室がいっぱい現れたんですね。

「料理教室にいろんな人がいるから、面白かったんだよね。全く料理ができない人だったり、私よりも年配の人もいて。そういう出会いも楽しかった。仲良くなった人と『あっちにこんな料理教室があるわよ』って、情報交換したりして」

ー最終的には、ご自身で料理教室を開いたんですね。

「そうそう。さっき話してた美容院の子達に『美味しいから教えて』って言われて。料理教室っていうのかな。自宅で教えるからいつでもおいでって。

 そこから料理教室をやってたんだけど、コロナの影響でここ2年ぐらいはできなくなったから、どうしようかなって思ってました」

仲間がいるって、なんかいい。

ーFocus&Journey(以下、フォーカス)と出会ったのはその頃ですか?

「もともとハピちゃん(大野理恵さん)とか、まぁさん(高山雅樹さん)とは知り合いで、こんなことやるよっていう話を聞いて。

歯医者の人間関係で苦しんだこともあったから『やっぱり自分にはお勤めはできない』って思って、自分で何か事業を興したい気持ちはあったんだけど、でもなかなか…。お勤め行ってる方が精神的に楽じゃない?(笑) 」

ー入居は迷っていたんですね。

「私、友達がいなくて。主人が生きていた時、お付き合いしてた友達は一人だけで。主人が亡くなってからは、いろんな人と出会うようになってたんだけど、中には良くない人もいてね。騙されたこともあったりして。だから最初、フォーカスの話を聞いた時も、大丈夫なのかなって心配で(笑) 友達に相談したりして」

ーお友達の反応はいかがでしたか?

「止める人もいたかな。でもなんか、乗っかってみようかなって思ったんだよね。
ちょうどハピちゃんから『伊豆にリトリートに行く』って聞いて『何それ。リトリートって何?』って(笑) ちょうど歯医者も辞めてたから、時間あるし行こうかなって参加したんです」

ー実際に参加してみていかがでしたか?

「なんか、仲間がいるのっていいなって。個人事業主って、基本ひとりじゃない? 私は家族がいないから余計に、そういう仲間っていうか、自分が思ってることとかやりたいことを打ち明けられる人って、なかなかいないんだよね。友達に言っても全然響かないし、逆に足を引っ張るような人もいるし」

ーフォーカスの人たちってどんな人たちですか?

「志っていうのかな、それを一緒にした人たち。あと、いつも『何かやろうよ』って思ってる人たちだから、一緒にいると自分も何かやってみようって思える。自分が思ってることとか、やってみたいことを話しても『やってみなよ』って言う人はいても、足を引っ張る人は絶対いない」

ー入ってみて、よかったと思いますか?
「よかったなって思う。仲間意識みたいなのができて。家族じゃないけど、楽しいなって、思います」

やってみないと分からない

しのぶさんのおせち

ー今、しのぶさんがされている「お料理を届ける」というサービスはいつはじめたんですか?

「料理教室がコロナでできなくなってから、色々手探り状態で。

 一度、家事代行みたいなのもやってみたんだけど、人のお宅ってやっぱり千差万別で、私にとっては結構大変で。どうしようかなって」

ーそれでフォーカスで相談されたんですね。

「フォーカスに誘われた時に『お料理の仕事をしていきたいの』って話してみたら、たまたま他の入居者さんから『お料理をお届けして欲しい人がいる』って紹介してもらって。それが最初のきっかけ」

ーすぐにやってみようと思われたんですか?

「何でもやってみないと分からないので『やります』って。色々考えたけど、届けるのもいいなあって」

ーやってみる精神、大事ですね。お料理は定期的にお届けされているんですか?

「週に2回かな。お宅にお届けに行くの」

ー何品ぐらい作って届けるんですか?

「メインと副菜が3品ぐらいかな。

 あとは宅配便で送るっていうのも並行してやってて。そこも週に2回、メインと2~3品って感じ。それと、ご近所にお客さまができて。そこは10食分ぐらいを作って、取りに来てもらってる」

ーすごい、大人気ですね!作るのは大変じゃないですか?

「作るのは楽しい。やっぱり、私の料理を食べてくれる人がいる。それが嬉しいです」

他力本願の人こそ、Focus&Journeyへ入った方がいい

ーしのぶさんにとって、フォーカスってどんな場所ですか?

ヒントとか繋がりがもらえる場所かな。あと、他力本願な人は来た方がいいと思う」

ー他力本願な人にオススメの理由は?

「私が他力本願だから(笑)ハピちゃんが『ほら、早く日にち決めて』って言ってくれないと、私、動けない人なの。
明日開催する味噌教室も、私が『こんなことやりたいな』って言ったら、ハピちゃんが『いつにします?』って。いつもそうなの(笑)」

ーそうやって背中を押してくれるから、進むことができるんですね。

「そうそう。『えー、今決めるのー?』って言いながら、しょうがないから麹屋さんに連絡するか…って動くことができたから」

ーお味噌教室が、明日開催されるんですよね?

「そろそろ料理教室再開しようかなって話で、手はじめに味噌を。それで場所をどうしようかって話になって。そしたらフォーカスの入居者さんの中にホールを持っている方がいて。それがまた、家から自転車で行ける距離で。よしここでやってみようって」

ーすごい!そんな偶然があるんですね。入居者さんとの繋がりが活きていますね。

さて、明日の今頃はちょうどお味噌教室の時間ですね。

「今、明日のために大豆を水に浸してて。夜になったら茹でようかなと。大豆も普通に煮ると4時間ぐらいかかっちゃうから、こっちでやってあげないと、来る人が大変だから。当日は、茹でた大豆と麹と塩を混ぜてもらって、味噌玉作るのをやってもらおうかなと」

ーこだわりの材料なんですよね。

「近所に麹屋さんがあるんだけど、すごくこだわりを持ってて。そこにお願いして材料を全部揃えたの」

ー明日、楽しみですね。

「そうね。喜んでもらえたらいいかな」

自分の「ファン」という存在との出会い

ー今後はどんなことをされる予定ですか?

「来月から、お料理教室を再開しようかなと」

ー久し振りの料理教室ですね!

「今、お料理を取りに来てくれてる近所のお客さんが、私の料理をすごく美味しいって気に入って、私のファンになってくれて」

ーすごい!ファンって言葉、嬉しいですね。

「届いた料理を毎回、お母さんに自慢してくれてて。それで少し前に、お母さんに料理をお裾分けしたんですって。そしたらお母さんがすごく美味しいって喜んでくれて、私に料理を習いたいって言ってるって。『えーっ!』ってびっくりしちゃって。だって、私より全然先輩じゃない?(笑)

でもお母さんは、すごく美味しいし、私がこだわってるのも知ってるし『しのぶさんが料理教室をはじめたら、会員番号1番になりたい』って言ってくれてて」

ーちょっと感動しちゃいます(涙)

「ね。明日のお味噌教室にも来てくれるんだって。そんな風に喜んでもらえて、来てくれる人が増えてくれるといいなって」

さいごに

お話を伺った翌日に開催されたお味噌教室は、大盛況で終了。みんなで作った味噌玉が熟成するのは、約半年後だそう。

しのぶさん曰く、「できたてのお味噌って、香りが全然違って美味しいんですよ」とのこと。

こだわりの材料を使い、みんなで楽しく作ったお味噌はきっと、すごく美味しく出来上がるのだろうと思うと、私もとても楽しみです。

昨年、迷いながらも「乗っかってみよう」そう思って参加したフォーカスで、たくさんの「仲間」に出会ったしのぶさん。

仲間たちからもらったヒントやアドバイスを「やってみないと分からないから、とにかくやってみる」と実行してみたことで、新しい「料理を届ける」というサービスをはじめることができ、自分を「ファン」と言ってくれる人にも出会うことができました。

料理を作るのが好き。
そして、その料理を誰かが食べてくれるのが嬉しい。

その思いを胸に、これからも誰かのためにお料理を作り続けるしのぶさん。
彼女の周りにはきっと、「美味しい」と笑う笑顔の花が咲いて広がっていくことでしょう。

文・インタビュー / 岡田 知子さん

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AUTHOR

【Focus&Journey管理人】おおの りえ

1971年8月26日埼玉うまれ / 東京都世田谷在住(静岡県伊豆と神奈川県二宮に拠点) A型 一児の母
OLから花の仕事に携わり18年。緊張しやすく自然体ではない自分に気がつき、心・体・精神の癒しの道へ。全ての経験が形となり【植物と共に、より自然な自分になる】をテーマに、1,000人以上の起業家支援など、多様なツールを用い活動。現在、誰もが持つ才能を現実社会の中で開花させる「Hanna Happiness(ハンナハピネス)」を経営。2020年にはオンラインメディア「Healing Garden」をスタート。リアルでは伊豆にてリトリートイベント主催。モットーは「信頼」。

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