高山亜希子さん インタビュー「何を選んでも肯定してもらえる。『これでいいんだ』をいっぱいもらえる」

 真夏日を記録した5月のある日。「こんにちは!」と、ほがらかな笑顔で挨拶されるのは、高山 亜希子(たかやま あきこ)さん。

Focus&Journey(以下、フォーカス)管理人の一人である高山雅樹さんの奥さんであり、入居者でもある亜希子さん。
現在は、ご主人が経営する整体院のお仕事を手伝いながら、筆文字アーティストとしても活動されています。

実は3年前、18歳だった息子さんを交通事故で亡くされました。「筆文字は、息子の置き土産みたいなものなんです」と話されます。息子さんのこと、筆文字について、そしてフォーカスの入居者として感じることなど、お話を聞かせていただきました。

目次

息子さんの一言からはじめた筆文字

ー 息子さんのことを伺ってもいいですか?

「3年ぐらい前ですね。夏休みを利用して、自転車で青森の青池まで行くって出かけて。旅は全部行程を終えたんですけど、帰りに事故で。『出発したの?』って連絡したLINEが既読にならなかったんですよね」

ー つらいご経験をされたんですね…。

「不妊治療をして、やっと授かったお宝ちゃんだったので、なんで?っていう思いはありましたね。最初はもう死んじゃいたくて、主人と不摂生してたら死ねるかなとかって。

でも少しずつ、周りの人やコミュニティとか色々なもののおかげで、前向きになれたと言うか。

今は、生命について伝えていく役目をいただいたんだなって思っていて。主人ともそういうお話とかもしていこうねっていう話はしてます」

ー 筆文字を始めたきっかけが、その息子さんなんですよね。

「息子が『母ちゃん何か楽しいことないの?』って言ってくれたんです。

ー 楽しいこと?

「うち、バスケ一家だったんです。息子がバスケ大好きだし、主人も子供たちに教えてたり、私もやってたし。でも息子が高校生の時に、先生と合わなくてバスケを辞めちゃったんですね。

 私は息子の試合を見に行くのが、生きがいみたいになってたので『私、何して生きてたらいいんだろう』って喪失感がすごくて」

ー それで「楽しいことないの?」だったんですね。

「『母ちゃんの好きなことないの?』って言われて、そんな選択肢あるんだ!って考えたんです。元々お習字やってて、相田みつをさんの書とか好きで、上手な字を書くというよりは、何か自分を表現できる書が書きたいなって思って。

『ああいうのやってみたい』って言ったら『やればいいじゃん』って言ってくれて」

ー 息子さん、上手に背中を押されたんですね。

「そこから、たまたま行こうとしていたイベントの主催の方が筆文字を教えてる方だったり、なんかもうポンポン展開して、1年後には書いたものを売ってましたね」

ー 筆文字は、書いてる時が楽しいんですか?

「構想を練ってる時間とかも楽しい。言葉をただ書くというよりは、どういう風に形にするか。文字だけどアートみたいな感じですね」

ー 息子さんも喜ばれたでしょうね。

「息子がいた頃は、人の模倣ばっかりやってたんですよね。うまく書けたと思って息子に見せると『それは誰の言葉?』って。

 ある時『あのさあ、真似はもう上手じゃん。今度は自分の言葉を自分なりに書いてみたら?』って言われて。『まだ自信ない』って言ったら『最初はなんでもいいんだよ。やんないとできるようになんないじゃん』って言われて。まあそのうちやってみるわって言ってたら死んでしまって。見せれなかったんです。自分の書っていうのを」

ー 見せたかったですね…。

「それもちょっと後悔してて、だって死ぬと思わないから。いつかもっと上手になってからって思ってたけど、そうじゃないんだな。やってみようなんだなって思いましたね」

書の個展がきっかけでフォーカスに入居

ー 普段はどんな活動をされているんでしょうか。

「時々筆文字のご依頼をいただいて書いています。その方の心の声を文字にしたり、最近は、カフェのメニューを書いて欲しいというご依頼をいただきました。 あと、個展を2回やりました」

ー その個展がきっかけでフォーカスに入られたんですよね?

「そうなんです。(管理人の)ハピちゃんが『写真の個展やりたいな』ってポロッと言ったのを、うちの主人が『あっこもやりたいって言ってたから一緒にやったら?』って言ったのがきっかけで」

ー そうやって「二人展」が決まったんですね。

「私の知らないところで決まってて。主人から『個展やるよ』って言われて『え?』みたいな(笑) あの2人、すぐ『やりましょう』なんですよ(笑)

でも、ハピちゃんとだったらやれるかもって。1人じゃちょっと怖いけど、ハピちゃんがいるんだったら大丈夫かもって」

ー「二人展」はハピさんの写真と、亜希子さんの書のコラボだったんですよね?

「そうですね。ハピちゃんの写真を見て、それに寄せたような言葉を書いて展示しました」

ー そういえば、元々ハピさんとはお知り合いだったんですか?

「いえ、主人から名前はよく聞いてたけどお会いしたことはなくて。二人展の打ち合わせのオンラインで『はじめまして』って。それで勢いでフォーカスも入っちゃったっていう(笑)」

ー 勢いで!

「その前に自己啓発の講座に通っていたんですけど、そこで色んなことを解決してスッキリしたところにフォーカスのお話があって。ここから自分にフォーカスして旅をするってぴったりだなと思って。流れが来てるなって思って入ったんです」

ー へえ、いい流れですね。

「あと、ハピちゃんのめっちゃ良い承認感ですね。『いいのよ。それでいいの』って言ってくれるのがめちゃめちゃ嬉しくて。

 私、ハピちゃん大好きで。1つ年上なので、本当のお姉ちゃんみたいに思ってます」

ー実際に「二人展」をやってみていかがでしたか?

「すごく良かったです。
 二人展の会場が、フォーカスのパートナーであるカフェMICHIKUSAさんだったので、カフェをやってみたい方とお料理が好きな方が、作ってきたケーキやお料理を提供したりもして。『二人展がみんなの一歩になったね』って話してました」

「〜でいいんだ」といっぱいもらえる場所

ー フォーカスの入居者になって、何か変わりましたか?

「居場所ができた気がするっていうのかな。入居者さんの中には一人暮らしの方もいらっしゃるんだけど、その方も『家族ができたみたいだ』って言われてて。
 私達も家族を一人亡くしていて、二人では補いきれないこともあるけど、ここに来て話すと、共感してくれたり、意見をもらえたりとかするのがいいなあって」

ー 温かい場所なんですね。ハピさんとの対話はいかがですか?

「『やりたくなかったら、やんなくていいよ』って言ってくれるので、その『~~でいいんだ』をいっぱいもらえる場だなっていうのが、一番大きいですね」

ー「~~でいいんだ」とは?

「たとえば『~~しなければならない」とか、苦しいじゃないですか。『しなければ』『しちゃいけない』って、強制されると苦しいですよね」

 

ー 確かに「しなきゃいけない」って苦しいですね。

「気分が乗らない時とか、『やろうよ!』っていう言葉がつらい時もあるじゃないですか。そういう時に『休んでいいんだよ』って言ってもらえる。

『やらなくてもいいよ』『やってもいいよ』『どっちでもいいよ』『あこちゃんの好きにしていいよ』って、選択権が全部私なんですよね。どれを選んでも、とにかく全部肯定してくれる」

ー 誰に対しても「やってみよう」じゃないんですね。

「じゃないですね。進みたいって思ってる人には『やってみたら?』って声かけるけど、ちょっと心が疲れてるなとか、今お休みが必要だなって人には、癒しの言葉とかをくれる。ハピちゃんはそういうのがすごく上手だなって思います。」

ー それは救われますね…。

「私がやりたいと思ったらやってもいいし、やりたくなければやらなくてもいい。どちらを選んでもいいんだよって。
 もし何かやりたいってなった時は『やってみよう!』って背中を押してくれる。それを実現するために『じゃあどうする?どうしたい?』と問いかけてくれて、一歩進める。
 何を選んでも全部肯定してもらえることで『これでいいんだ』って思えるのが、一番大きいです

相手の心と会話して、それを文字にしていく

ー ミーティングでは、具体的なお仕事の相談もされるんですよね?亜希子さんはどんなお話をされましたか?

「そうですね。筆文字の価格設定は、ハピちゃんとの対話から決めました」

ー どんな風に決められたんですか?

「実は、あえて高めにしてるんです。最初はそうじゃなかったんですけど、ハピちゃんに『いつまでもその値段でいいの?あこちゃんはそういう人じゃないよ』って言ってもらって。

『本当にあこちゃんの書が好きで、いくらでも出すって言ってくれた方が嬉しくない?』って言われた時に、確かに、”安ければ買う”っていう人に渡したくないなって」

ー 「そういう人じゃない」嬉しい助言ですね。

「たかが1枚だけど、構想を練ってる時間とか入れると、結構な時間を費やしているので、そこを分かってくれる人だけ買ってくれればいいと思って。それでも欲しいと頼んでくださる方がいる。だからこそ、必死で考えますよね。

 でもその時間も楽しいし、出来上がった時に『喜んでもらえるかなあ』って相手の気持ちを考えるとほっこりしてくるその時間が好きですね。

 やってるのは書だけど、人と繋がってる感をすごく感じます

ー ご依頼された筆文字というのは、何を書かれるんですか?

「書き下ろしって言って、相手の心と会話するんですけど。

 対面やオンラインで実際にお話をしながら、相手のお腹の中にいるインナーチャイルドに、私のインナーちゃんを行かせてお話してきてもらうというか、感覚でね」

ー インナーチャイルド同士の会話から拾った言葉を文字にするんですね。

「出てきたワード何個か拾って、それを繋げたりとか。だんだん慣れてくると、この人にはこの言葉が必要っていうのが降りてきたりとか。

『これ伝えたら、ちょっと前向きになれるかも?』みたいなことが出てきたら、それを書いて渡すんですけど」

ー みなさん、どんな反応をされますか?

「大体渡すとみんな泣くんですよ。『私のことと見てたんですか?』って言われたりします。だから『あなたの心がそう言ってるから』ってお伝えしてます」

ー そういえば、ヒーリングも勉強中なんですよね?

フォーカスの人たちって、みんな止まらずに進化し続けているんですよね。自分がどうしたいか?にまずフォーカスして、やりたいってなったら、みんなで助けるよ『一緒に旅しよう』みたいな。コンセプト通りの場所で。だから私も進化したいなって」

ー まさに「フォーカスしてジャーニーをする」ですね。

旅の途中で、もしめげそうになっても、励ましてくれたり、後押ししてくれたり。ダメな時は、そっとしておいてくれたり。本当に無理なくいられる場所なんです

ー リトリートも素敵ですよね。

「そうなんですよ。普段お会いできない他の入居者さんにお会いできるのも嬉しいし、伊豆とか自然が多いところに行くので、めっちゃ癒されるんですよ。ちょっと体調が悪かったんですけど、行ってみたら全然大丈夫で。森にいる時なんて、自分が体調悪いなんて忘れるぐらい。ほんとよかったです」

誰かの勇気になれたら

ー 最近、体調が悪いとのことですが…?

「調べまくったら、ちらちらと更年期っていう字が出てくるんで、そうなんだろうなって。日によって体調が全然違うので、大変なんですけどね。

 でも、更年期って、順調に老いてる証拠なんですって。健康に年を取って来たからあることだってどこかに書いてあったのを見て、私は順調にちゃんと身体が老いてっていってるんだって。じゃあまあいいことなのかって。思えない時もありますけど(笑)」

ー それで発信をはじめたんですよね?

「noteを書き出したんです。そしたら反響がすごくて。『私もそうなんです!』って。
だから、そういう人たちの勇気になればいいななと思って、発信していこうと」

ー これから更年期を迎える人にとって、すごく励みになります!

「そうですよね。これから来る人たちも怖がる必要はないよって。自分の経験を伝えられたらと思っています」

さいごに

お話を伺った日、ご主人が不在だったのですが「今日は大丈夫?元気?」という連絡が来てね、と亜希子さん。

「今日は穏やかだったよって伝えたら、よかったねって」そう言われる様子から、仲の良いご夫婦なんだなというのが伝わって来て、こちらもほっこりしました。

人生の前半戦、本当に色々なことを経験されてきました。

後半戦は自分との深い向き合いが多く「生きてるなあ!って思います」と笑った笑顔が印象的でした。

いまぶつかっている更年期の壁も「発信してみんなの役に立てたら」と、前向きに捉えている亜希子さん。

フォーカスで出会った、新しい家族のみなさんとともに、これからもっとご自身の人生を楽しんで旅して、
広げていかれるんだろうなと思います。

インタビュー・文 / 岡田知子さん

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管理人ハピからのメッセージ💌

あこちゃんとの出会いは「二人展」がきっかけでした。
その頃は、書で活動することを公にはしていなくて、友達に頼まれたら書くような感じでした。

「二人展」を開催したことで「筆文字のアーティストとして活動していいんだ」って許可が出て、販売をはじめたり、他の方ともコラボして二度目の個展を開催されていて、すごいなあ!と思いました。

あこちゃんはいつも、等身大で素敵だなって思います。
自分が更年期とかって、言いたくないとか思ったりすると思うんです。

お子さんが亡くなったことも、やっぱりすごい体験で、そういうことに蓋をするんじゃなくて、ちゃんと向き合って、一つ一つ一歩一歩進んでるあこちゃんは、いつも 自分に素直で自然体なところが素敵だなと思っています。

「そのままありのまま」っていうのを何か実践してるような方だなって。ありのままの天才みたいな。
これからもますます「ありのまま」のあこちゃんが、どんな活動や表現をしていくのかが、とても楽しみです。

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AUTHOR

【Focus&Journey管理人】おおの りえ

1971年8月26日埼玉うまれ / 東京都世田谷在住(静岡県伊豆と神奈川県二宮に拠点) A型 一児の母
OLから花の仕事に携わり18年。緊張しやすく自然体ではない自分に気がつき、心・体・精神の癒しの道へ。全ての経験が形となり【植物と共に、より自然な自分になる】をテーマに、1,000人以上の起業家支援など、多様なツールを用い活動。現在、誰もが持つ才能を現実社会の中で開花させる「Hanna Happiness(ハンナハピネス)」を経営。2020年にはオンラインメディア「Healing Garden」をスタート。リアルでは伊豆にてリトリートイベント主催。モットーは「信頼」。

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